<収録作品は『こころ』など> 夏目漱石全集(8) [ 夏目漱石 ](ショップ:楽天ブックス)  小説

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■目次
こころ/道草


■青空文庫から『こころ』を一部抜粋
 宿は鎌倉でも辺鄙(へんぴ)な方角にあった。玉突(たまつ)きだのアイスクリームだのというハイカラなものには長い畷(なわて)を一つ越さなければ手が届かなかった。車で行っても二十銭は取られた。けれども個人の別荘はそこここにいくつでも建てられていた。それに海へはごく近いので海水浴をやるには至極便利な地位を占めていた。
 私は毎日海へはいりに出掛けた。古い燻(くす)ぶり返った藁葺(わらぶき)の間(あいだ)を通り抜けて磯(いそ)へ下りると、この辺(へん)にこれほどの都会人種が住んでいるかと思うほど、避暑に来た男や女で砂の上が動いていた。ある時は海の中が銭湯(せんとう)のように黒い頭でごちゃごちゃしている事もあった。その中に知った人を一人ももたない私も、こういう賑(にぎ)やかな景色の中に裹(つつ)まれて、砂の上に寝(ね)そべってみたり、膝頭(ひざがしら)を波に打たしてそこいらを跳(は)ね廻(まわ)るのは愉快であった。


■『こころ』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。



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